クレームを全く受けないファンドレイジングの手法などあるだろうか。
私はそのような手法を知らない。どのような施策であってもクレームはつきものであり、比較的クレームが少ないとされるテレマーケティングや街頭募金、クラウドファンディングであっても、クレームはゼロではない。
極論を言えば、クレームを恐れていては、寄付集めはできない。クレームは、発生数ではなく、発生率とそのクレームの内容が重要である。100件のアプローチをして1件のクレームを受けた場合と、1万件のアプローチをして9件のクレームを受けた場合を比べると、クレーム内容が同様のものであれば、後者のほうがクレームは発生し難いアプローチだったと評価されるべきである。しかしながら、9件もクレームを発生させてけしからん、と批判する上司がなんと多いことか。たとえ1%のクレームが発生しても、そのクレームが団体の名誉にかかわるような深刻なものでなければ、残りの9%から受け取れる寄付や感謝に目を向けたほうが賢明だ。クレームを恐れず資金調達し、もしクレームが入った際には、丁寧に対応して大きなクレームになることを防ぐ。
さらには、クレーム履歴をつけて、クレームが発生しやすい施策、スクリプト、担当者、文章など、細かく分析して洗い出すことで、クレームゼロを目指し、改善に改善を積み重ねていく。
最もクレーム率が高い施策ランキングのトップ3は、自宅訪問型キャンペーン、街頭キャンペーン、そして遺贈のパンフレットを送付した時、この3つであることが多い。
日本のクレーム率は海外のそれに比べるとだいぶ低く、クレームを受けやすい街頭キャンペーンでも、1%を下回っている現状である。これは、私が実際に体験したことだが、毎年のように高額の寄付をくれる支援者に、遺贈のパンフレットを送った際、「私に死ねというのか!」と大クレームを頂戴したことがある。すでに何度もお会いしており、パンフレットを郵送で送っても大丈夫だろうという甘い認識から発生した大クレーム。すぐに電話し訪問、直接の謝罪をし、その後に自筆の手紙を送ることで難を逃れたが、苦い失敗経験である。