今から数百年も昔、中世の時代、イタリアでの出来事である。
崩れかけた聖堂を修復するために聖フランチェスコは、街に出て聖堂修復に必要な石を一人で集め始めた。あくまでも私の想像となるが、一人で沢山の石を集めてまわるには、相当の労力や時間がかかったことだろうと思う。しかし、聖フランチェスコは、沢山の人から共感を得ることができ、短期間で石を集めきり、見事にサン・ダミアーノ聖堂を修復したのだ。
街に出て市井の人から石を集める際に彼は何と言っただろうか?
ただ「石をください」と言っただろうか。違う。その頼み方では十分な石は集まらなかったはずだ。
では 「石をくれなきゃ、呪ってやるぞ」と言ったか。 もっと違う。そんなやり方では、1つの石
も集まらない。
正解はこうだ。
彼は市場で歌を歌い、歌で人々の足を止めてから、聖堂修復のために石が必要なことを伝え、最後にこのように言ったとされている。「石をくださった方は天国で報いをうけます。3つくださった方は3回の報いをうけます」と。
聖人として知られる聖フランチェスコを事例に挙げることにはためらいを感じるが、彼の行為は寄付を集める上で重要な要素を含んでいる。天国で報いをうける、という言葉は人々の心の奥底に響くものであり、 の人が望んでいるものでもある。 3回報いをうける、というくだりも、3つの石を寄付したくなる強い衝動を引き起こす。人の心を動かすには、その人の欲を満たせ、とはよく言ったものであり、彼が言ったとされる言葉は、人の欲を満たし、心を動かした。
そして、最後に、聖フランチェスコが1人で重い石を運んでいる姿を想像してみてほしい。
言葉だけではなく彼の行動、情熱、信念が、私たちの感情に訴えてくるではないか。